映画「パリ、テキサス」を最初に観たのはまだ10代の頃でした。
当時、観る前に「ロードムービー?パリからテキサスに旅行する話かな。面白くないかも」と、
何の期待も予備知識もなく観ました。
観た後、これがロードムービーというものか。と、
新しい世界に足を踏み入れ、少し大人になったような気がしたものです。
そして、アメリカって広いなと。
この映画のことを今回とりあげることにしたきっかけは、
先日読んだ、藤原伊織さんの未完の作品です。
主人公の男女はネットのゲーム対戦相手として出会います。
その女の子のハンドルネームが「paristexas」です。
映画からとった名前で、男が映画の内容をしばし思い出すシーンがありました。
藤原伊織さんも好きな映画なんだ。(きっと)
と嬉しくなりました。
〈映画のあらすじ〉
トラヴィスはアメリカのテキサスの砂漠で行き倒れそうになり、助けられます。
病院に弟が迎えに来ます。(この弟がすごくいい奴です。)
トラヴィスは数年前から失踪していて、兄弟は久しぶりの再会です。
弟は、体も弱っていて心も閉ざしてしまっているトラヴィスをロサンゼルスの自分の家に連れて行きます。
そこには、7才になるトラヴィスの息子、ハンターがいます。
弟夫婦は兄に代わってハンターを親代わりに育ててきました。
最初ハンターは父親の事など全く覚えておらず、二人はぎくしゃくしていますが、
少しずつ心を通わせ、ある日二人で母親シェーンを捜しに行くことになります。
(ハンターを愛情一杯に育ててきた弟夫婦は、なんだか複雑。)
シェーンは、ヒューストンののぞき部屋で働いていました。
マジックミラーを通してシェーンに語られるトラヴィスの切ない思い。
じーん。
最後、ハンターが待つホテルにシェーンが現れ、抱き合うのを見届けて
トラヴィスはまた立ち去って行きます。
パリ・・・とは、ここではテキサス州にある砂漠しかないようなちっぽけな場所の地名です。
映画の中で、トラヴィスの両親がかつて結ばれた場所として語られます。
両親が結ばれた場所。家族のスタート地点ということでしょうか。
マジックミラーに遮られて、客としてやって来たトラヴィスの姿はみえないまま、
彼の独白を聴くシェーン役のナスターシャ・キンスキー。
最初はただ、男の昔話を聞いてるんだけど、男がトラヴィスではないかと感じ始めます。
そして、トラヴィスだと確信し、彼の心の内を知る。
この微妙な表情の変化がいいです。
ハンター役の少年がまたいい。
トラヴィスと一緒にシェーンの車を捜すところとか。
シェーンに会えて、恥ずかしくて、でも嬉しくて、飛びついて抱きつくところとか。
全身から溢れ出るお母さんへの愛情に拍手したくなります。
親の心子知らず
なんていいますが、子どもが親に抱く思いの方が数百倍大きい、きっと。
誰でも、いつまでたっても誰かの子ども。
今まで3、4回観たと思いますが、
観るごとに自分の視点が変わっています。
くだんの藤原伊織さんの本の話を少し。
「遊戯」
とっても面白い話です。が、未完です。
いいところで、〈藤原伊織さんは2007年5月17日・・・未完となりましたことをご了承願います。〉とくくられています。
じたばたしながらウェーンウェーンと泣きたいところです。
そして、「遊戯」のあとに、「オルゴール」という短いお話が載ってます。
これが遺作とされるようですが、それが絶品でした。
ウェーンウェーン